家の断熱が今注目されているワケ
日本の家は昔から「夏暑くて冬寒い」と言われてきました。その大きな理由のひとつに、家の気密性や断熱に適正な基準が設けられていなかったことが挙げられます。1999年には、当時の先進国のなかで最低だった日本の断熱水準を見直すべく、「次世代省エネルギー基準」が制定されましたが、本基準は努力目標であり、基準を満たした住宅の普及率はかなり低いものでした。
しかし、近年は省エネや環境配慮の意識が高まるにつれ住宅の断熱性も注目され、ついに2025年4月からは、新築住宅に一定の断熱等級を義務付ける「省エネ基準適合義務化」が施行されました。新たな省エネ基準は「断熱等級の基準」と「一次エネルギー消費量の基準」から構成されます。東北・新潟エリアのような寒冷地・準寒冷地では、どのくらいのレベルが望ましいのでしょうか?
■新築住宅に「断熱等級4」が義務化、2030年にはさらに引き上げ予定
住宅の断熱性能は、「断熱等級」によって1〜7の7段階で評価されます。等級の数値が大きいほど断熱性能が高く、エネルギー効率に優れ、より快適に過ごせる住まいであることを示しています。
「省エネ基準適合義務化」の施行により、現在は原則すべての新築住宅に「断熱等性能等級4以上」が義務付けられました。
これからの新築住宅は「断熱等性能等級4」が“最低等級”となり、断熱等級3以下の家は今後新たに建てることはできません。
さらに、2030年度には「断熱等性能等級5以上」に引き上げられる予定です。
■一次エネルギー消費の見直し
一次エネルギー消費量とは、住宅が1年間に使うエネルギー(冷暖房・給湯・照明・換気など)を、元になる「一次エネルギー(石油・ガス・電気など)」に換算し、住宅の省エネ性能を評価する指標です。
建物の中で使用するエネルギーを減らすために、エコキュートやエアコンのような高効率機器を導入することが特に重要です。
2013年に「一次エネルギー消費量等級」という、住宅が一年あたりに消費するエネルギー量を数値化した指標が確立されました。一次エネルギー消費量の評価にはBEI(Building Energy Index)が使われ、BEIが小さいほど住宅のエネルギー消費量が少なく、一次エネルギー消費量等級も高いことを指します。
2025年4月に義務化された省エネ基準では、「一次エネルギー消費量等級4以上(BEI1.0以下)」であることが条件となっており、2030年度には義務化水準が「一次エネルギー消費量等級6以上(BEI0.8以下)」に引き上げられる予定です。
高い断熱性能を持つ家は、暖かく快適で、節電や環境配慮の観点からもメリットがあります。これからの家づくりでは、こういった基準を満たした住宅を建築できる施工店選びが不可欠です。
高断熱・高気密住宅とは
省エネや快適な暮らしにつながる家は、「高断熱」だけでなく、家にすき間がないこと、つまり「高気密」であることも不可欠です。もしも家にすき間がたくさんあると、例えば冬には部屋の暖かい空気が外に漏れ、外の冷たい空気が入ってきてしまいます。「断熱」と「気密」は密接に関係しているため、家づくりではセットで考える必要があります。
住宅の断熱性や気密性を評価する主な指標には、断熱性能を示す「UA値(ユーエーち)」と、気密性能を示す「C値(シーち)」があります。それぞれについて、次項からかんたんに解説します。
■断熱性を示す「UA値(外皮平均熱貫流率)」
UA値とは、外壁・床・屋根・窓といった建物の「外皮」を通して、熱がどれだけ出ていくか、また外からどれだけ入ってくるかを示す指標です。UA値が小さいほど熱の出入りが小さく、断熱性能の高い家だと言えます。
省エネ基準は、各地域の気候に応じて8つの地域区分に分けて設定されています。これを「省エネ基準地域区分」と言い、この区分に基づいてUA値の基準値も設定されています。
地域区分は1〜8地域に分かれ、東北・新潟地方はエリアに応じて2~5のいずれかに区分されます。「省エネ基準地域区分」は、冬の寒さに対しての断熱を重視しているため、寒冷地ほど高い基準が設けられていますが、断熱性が高ければ高いほど、もちろん夏の暑さも遮断することができます。
なお、表に付記しているηA値(イータエーち)は、平均日射熱取得率とも言い、住宅の外皮を通して、どのくらい太陽光による熱(日射熱)が入ってくるかを表します。数値が大きいほど多くの日射熱を取り込み、反対に小さいほど日射熱を遮ることを示します。特に夏における省エネ性能を評価するために使われます。
■気密性能を示す「C値(相当隙間面積)」
C値は気密性能を表す数値で、小さいほど家のすき間が少なく、気密性が高いことを示します。断熱性が高くとも、すき間がたくさんあるようでは外気温の影響を受けてしまいます。したがって、快適な断熱住宅をかなえるには、「UA値」と「C値」をセットで考えることがポイントです。
さて、断熱は断熱材の種類や量がその性能を左右しますが、気密性能については施工店の技術力が大きく影響を与えます。また、「C値」は公的に決められた基準値がなく、測定も義務ではありません(多くの施工店では1.0以下をひとつの基準と捉えているようです)。したがって、「気密測定をおこなっているか」かつ「1.0以下の数値を出しているか」が、良い施工店を見つける際の判断材料のひとつとなるでしょう。
そもそも断熱とは?
ここまで、住宅の断熱性や気密性の重要さについて解説してきました。しかし、そもそも「断熱」とはどんな性能を指すものなのでしょうか。混同されることの多い「遮熱」との違いについても、おさえておきましょう。
■断熱とは熱が移動するのを防ぐこと
断熱とは、文字通り「熱」を「断つ」こと。住宅においては、家の外側と内側との間で熱を伝わりにくくすることを言い、断熱性能が高いほど家は外気温の影響を受けにくく、かつ、冷暖房の効果が高いため、「夏涼しくて、冬暖かい家」が実現します。
■断熱と遮熱との違い
一方、遮熱とは「熱」を「遮る」こと。住宅においては、強い日差しを反射して室内の温度上昇を防ぐことを言います。例えば、遮熱ガラス、カーテン、ブラインドを利用することで、日差しを室内に入れすぎないようにする遮熱効果が期待できます。このように遮熱は主に夏の快適さに関係し、断熱は暑さ・寒さのどちらにも効果があります。
断熱性能が高い家にはメリットがたくさん!
冬の寒さや夏の暑さに左右されず、一年を通して快適に暮らせる家。その鍵を握るのが「断熱性と気密性」です。高断熱・高気密の住まいは、光熱費の節約だけでなく、体への負担を軽くし、家の寿命まで延ばす効果があります。ここでは、快適で健康的に暮らせる理由を3つの視点から紹介します。
■省エネで光熱費が節約できる
断熱性能の高い住宅では、冬は暖房の熱を逃がさず、夏は外の暑さを遮るため、冷暖房の効率が大きく向上します。その結果、少ないエネルギーで室内を快適な温度に保てるため、光熱費の節約にもつながります。
また、室内の温度変化が少ないため、冷暖房の使用頻度そのものも減らせますし、設定温度を必要以上に低く・高くする必要もありません。そのため、冷暖房機器の負担も小さくなりますから、光熱費の節約だけでなく、結果的にエアコン等の寿命を延ばす効果も期待できます。
■部屋ごとの温度差が小さく、体への負担が軽減される
高断熱・高気密の住宅は、すき間からの空気の出入りを防ぎ、家全体の温度が均一に保たれやすくなります。特に、冬の寒さが厳しい東北・新潟では、暖房の効いたリビングと、冷え切った廊下・浴室・トイレなどとの温度差が大きく、気温差によって体に大きな負担がかかる「ヒートショック」が心配されます。高断熱・高気密の住宅なら、「ヒートショック」を防ぎやすく安心して過ごせます。
また、冷暖房を効率良く行えるため、家全体が冬は暖かく、夏は涼しい快適な環境に。最近の研究では、高断熱・高気密による室内温熱環境の改善が、健康にも良い影響をもたらし、高血圧やアレルギー症状の改善につながるという調査結果もあります。
■キレイな空気で健康的、カビや結露も起きにくい
高断熱・高気密住宅は、すき間を最小限に抑えているため、新鮮な空気を計画的に取り入れる仕組みが欠かせません。現在の新築住宅には、建築基準法で「24時間換気システム」の設置が義務づけられています。このシステムにより、常に空気がゆるやかに入れ替わり、室内の空気が清潔に保たれます。
自然換気と異なり、機械による計画的な換気は、ホルムアルデヒドなどの有害物質や二酸化炭素を効率よく排出します。そのため、シックハウス症候群の予防や、家族の健康維持にも役立ちます。
さらに、断熱住宅は結露が発生しにくいのも大きなメリットです。結露によるカビやダニの発生を抑えられるので、建物の劣化を防ぎ、結果的に建物の寿命を延ばすことができるのです。
家全体を断熱する方法は主に2つ
断熱する方法としては、「家全体を断熱材で囲う」「窓や戸といった開口部を断熱する」「遮熱ガラスやカーテンなどで日射熱を防ぐ(日射遮蔽)」などがあります。ただし、特に東北・新潟エリアのような寒冷地・準寒冷地では、冬季に室内の熱を逃さないように、家全体の断熱効果を高めることが大切です。
家全体を断熱する場合は、断熱材を家の内部に充填する「充填断熱工法」か、もしくは家の外側を断熱材で覆う「外張り断熱工法」のどちらかが選択肢となります。さらに最近では、壁は充填断熱、屋根は外張り断熱といったように、両方を組み合わせた「付加断熱」という方法も増えています。
■充填断熱(内断熱)工法
「充填断熱(内断熱)」とは、柱や梁など建物の構造体の間に断熱材を詰める工法です。鉄筋コンクリート造では外壁の内側に、鉄骨造や木造では柱と柱の間の壁内部に断熱材を充填します。
この工法は国内で広く採用されており、壁の内側の空間を利用するので、後述する外張り断熱のように断熱材のためのスペースを新たに設ける必要がありません。その分、施工コストを抑えやすく、また断熱性能も安定しやすいのが特長です。
一方で、構造材と断熱材が接する部分にわずかなすき間(熱橋・熱の通り道)が生じる可能性があり、その部分から熱が伝わりやすくなる点には注意が必要です。適切な施工によって、このリスクを最小限に抑えることが大切です。
■外張り断熱工法
「外張り断熱工法」は、柱や梁などの構造体を外側から断熱材で包み込む工法です。建物全体を覆うように施工するため、熱の通り道(熱橋)が少なく、断熱性・気密性ともに非常に高いのが特長です。
また、外壁側で温度差を遮断することで、結露を抑え、木材の腐食を防げるというメリットもあります。
さらに、壁の内側の空間を残せるため、配線や配管などのダクトスペースとしても活用できる点も魅力です。構造体と断熱層を分けて施工することで、メンテナンスもしやすく、長期的に安定した性能を維持できます。
一方で、外壁全体に断熱材を施工する分、建築コストが高額です。また、断熱材の厚みや固定方法など、構造上のバランスに配慮した設計・施工が求められます。
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快適な住まいを実現するためには、断熱の知識や技術を持つ施工店選びが欠かせません。東北電力が推奨する電化住宅施工店「eハウスビルダー」は、省エネ住宅施工のエキスパート。建築に必要な「知識」「技術」「実績」を兼ね備え、断熱性能をはじめとした省エネ基準を高いレベルで満たしています。
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まとめ:夏も冬も“ちょうどいい”、一年中快適に過ごせる家づくり
高断熱住宅の魅力は、なんといっても「夏涼しく、冬暖かい」こと。断熱性が低い住宅に比べて冷暖房の使用を抑えられるため、省エネ効果が高く、光熱費の節約にもつながります。しかも、「暑さや寒さを我慢して節約」ではなく、無理なく快適に暮らせるのが大きなポイントです。
特に冬の寒さが長く厳しい東北・新潟の気候では、断熱性能の高い家のメリットをより一層感じられます。外気温に左右されにくい室内環境は、暖房や冷房に頼りすぎずに快適さを保ち、健康面や家計の負担軽減にもつながります。
断熱性能の高い住宅では、部屋ごとの温度差が少なく、一年を通して快適に過ごせます。さらに、健康リスクの軽減、地球環境への配慮など、暮らし全体にうれしい効果がたくさんあります。これから家づくりを考える方は、断熱の仕組みや基準を理解し、後悔しない施工店選びをしてくださいね。
また、オール電化のことをもっと知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
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